IWATANI-PRIMUS イワタニ・プリムス株式会社

Base Camp イワタニ・プリムスがお送りするアウトドアを深く楽しむための情報ページ

アウトドアにお出かけになる場合は、引き続き、当該地区の自治体や受け入れ場所等から要請される感染防止に関する内容に協力するとともに、新しい生活様式に基づいた行動を心がけましょう。

山小屋に泊まれば、山の楽しみはもっと深まる

文・伊藤俊明

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日帰りの山歩きを繰り返すと、山との付き合い方がなんとなくわかってきます。そうしてもっと深く山を楽しみたいと思うようになったら、次は山小屋を利用する1泊2日の山行に出かけてみませんか。
いままでよりも標高が高い、大きな山へ。北アルプスや南アルプスのような長いルートも、山小屋を使って行程を刻めば歩きやすくなります。複数の山をつないで縦走したり、山頂を越えて山の向こうに下りたり、周回するルートを歩いたり。
地図を広げて想像してください。山小屋に泊まると、山の楽しみがぐんと広がります。


山小屋ってこんなところ

山小屋は大きくふたつに分けられます。ひとつは管理人がいて食事や寝具が用意される有人の小屋。営業小屋とも呼ばれます。もうひとつは管理人のいない小屋。こちらは避難小屋と呼ばれています。避難小屋を利用する場合は、寝袋などの寝具を持参する必要があります。食事も用意しなければいけませんから、はじめて山小屋を利用するなら、まずは管理人のいる営業小屋に行くことをおすすめします。
営業小屋を利用する最大のメリットは、日帰りの登山から極端に荷物を増やすことなく、山中で複数日を過ごせることにあります。ここでは山小屋=営業小屋として、その特徴や魅力を紹介します。

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小屋が掲載してくれるその日の天気予報は貴重な情報。しっかりと確認しよう

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お客さんを飽きさせないよう工夫を凝らした晩御飯。小屋ごとの個性が発揮されるところでもある

山小屋は山中の宿泊施設で、そのほとんどは徒歩でなければ行かれない場所にあります。生活圏から離れているため、施設や食事などのサービスは、おおまかにはその立地に左右されると考えてください。多くの山小屋が、必要な物資を歩荷やヘリコプターで運んでいます。稜線や山頂直下の小屋ともなれば、ジュース1本、カップラーメンひとつ運ぶのにも大きなコストがかかります。
一年を通して開いている山小屋もありますが、標高が高いところにある小屋は雪とともに営業を終え、冬の間は営業を停止します。電気やガス、水道は通じておらず、水は貴重です。携帯電話が使えないことも珍しくありません。ごく一部の小屋を除いて風呂もシャワーもありません。個室もありますが、蚕棚のようなベッドや男女相部屋がふつうです。

満天の星空を仰ぎ、太陽のぬくもりを知る

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平地では見られない満点の星空に感動する(写真:杉村航)

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日の出を望む。同じ時を過ごす山仲間とのやわらかな会話が弾む

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空気が澄み渡り遠くまで視界が効くときは雲海に浮かぶ富士を目にすることも(写真:杉村航)

山小屋は便利ではありません。しかし、平地の旅館やホテルにはない大きな魅力があります。それは、山の中に泊まれるということ。
日帰りの登山では、日が昇って明るくなってから行動をはじめます。日が暮れる前には下山しますが、山小屋に泊まればそのまま山で過ごせます。山中の夜と朝は、山小屋やテントに泊まらなければ体験できない時間です。
日没。太陽が傾き、西に沈むにつれて、空は見事なグラデーションを見せてくれます。赤からオレンジ、そこから淡い色になり、少しずつ青みを増して紫から濃紺へ。山の端が色をなくし、薄明の時間が終わると満天の星空です。稜線近くの山小屋なら、遠くに街の灯りが見えるでしょう。

翌朝はぜひ早起きを。高山では夏でも長袖が必要ですが、日の出とともに太陽のぬくもりが感じられます。山に登ると自然の大きさや人の小ささを教えられますが、山で一夜を過ごすと、その実感はいっそう深まります。朝食をしっかり食べてエネルギーを補給したら、新しい一日を歩きはじめましょう。

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高山の早朝はグッと冷え込み、霜がおりることも。陽が昇ればすぐに溶けて見られなくなってしまう

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朝陽と共に真っ赤に染まる山肌。早朝の凍えた体が一気に温まる

山小屋泊の装備について

山小屋は山中の避難場所でもあるため、多くの小屋は予約がない飛び込みの登山者も断ることはありませんでした。しかし、コロナ禍にある2021年は、ほとんどの山小屋が予約制になっています。就寝時に使うシーツや、小屋によっては寝袋の持参を求めるなど平時とは営業形態も異なるため、予約時にきちんと確認してください。
シーツなどが必要になる可能性はありますが、それを除けば、装備は日帰りの登山と大きく変わりません。いくつか念を押すとしたら、標高が高い山では夏でも防寒着を忘れないこと。ツエルトのようなビバーク装備も必須です。日中の行動食は火を使わないもので済ませることもできますが、緊急時のためにもバーナーとクッカーは持ちましょう。道に迷ったり、怪我をしたりして動けなくなってしまったときは慌てずに、温かい飲み物があれば気持ちも落ち着きます。もちろん、お茶やコーヒーは休憩時にもうれしいものです。モバイルバッテリーは濡れないようにファスナー付きの袋などに入れて防水対策しておきましょう。汗拭きシートがあると一日の終わりにさっぱりします。安眠できるように耳栓を必ず持つという人もいます。

これから装備を揃えるなら、バックパックと登山靴、そしてレインウエアは妥協せずにいいものを選びましょう。中型のバックパックは、日帰りから小屋泊まりの山行までカバーする万能選手です。登山靴は足に合った歩きやすいものを。レインウエアは防水透湿素材を使ったものが基本です。登山靴やレインウエアは時に取り違えたりするトラブルもあるので、自分のものだとひと目でわかる目印をつけておくと安心です。

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突然の悪天に備えてバックパック用のレインカバーも忘れずに

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小屋までのトレイルはハイキングルートよりもハード。しっかりと足首までケアするトレッキングブーツを選択しよう

山での安心感をもたらしてくれる山小屋、有効に利用することで安全な登山を

はじめて山小屋に泊まるときは、ガイドブックなどを参考に十分余裕がある計画を立てましょう。とくに夏の高山は午後になると落雷の危険が高まるため、15時ころには小屋に着くように心がけます。天気や体調が悪いときは無理せず山行を中止してください。その際は必ず山小屋にキャンセルの連絡を入れること。予約した客が来ないと事故や遭難が心配されます。近隣の山小屋に確認したり、時にはスタッフが探したりすることもあります。

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山小屋は近隣の小屋同士でネットワークを築いているところも。暗闇に灯される明かりは頼もしい

人里離れた山小屋は便利ではないかもしれませんが、安心してくつろげる安全な場所です。限られた条件で工夫をこらし、名物を用意している個性的な山小屋がたくさんあります。そうした山小屋を巡るのも山の楽しみのひとつ。ひと晩過ごせば、自分の足で登った山と同じように愛着をおぼえることまちがいありません。

おすすめのアイテム
ドイター フューチュラプロ36

ドイター フューチュラプロ36

背中の通気性が抜群に良く、1、2泊程度の小屋泊まりにも対応しやすい大きさ。日中の寒暖差対策に1枚羽織るジャケットを入れたり、山ご飯の装備を入れたりもできる容量です。

ローバー ラベーナⅡ GT ウィメンズ

ローバー ラベーナⅡ GT ウィメンズ

人間工学に基づいたタングやそのタングがずれないためのXレーシングシステムなど、LOWAの代表する機能を搭載したトレッキングブーツです。常にストレスのないホールド感を得ることができ、アルプスへのトレッキングもおすすめ。

プリムス P-153v

プリムス P-153

ハイパワー、コンパクト、軽量と三拍子揃ったウルトラバーナーは、温かい飲み物を作る際の湯沸しから山ご飯の調理まで幅広く活躍するコンロです。

ソース ハイドレーションパック2.0L

ソース ハイドレーションパック2.0L

歩行中の水分摂取はとても大切。のどの渇きを感じるときはすでに脱水症状に向かっていると言われています。バックパックの内部に吊り下げるように収納し、歩きながらの水分補給が可能です。

伊藤俊明(いとう としあき)

伊藤俊明(いとう としあき)

アウトドア誌や登山誌、WEBなどで活動するライター。冬から残雪期はスキーで山に行く。板をしまったら夏山の季節がスタート

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