写真・文:佐川史佳(ボルダリングサイト B3)
本ページの内容は商品インプレッション記事のため、使用者個人の感想を含んでおります。
ビギナーにビレイ(ロープによる確保)を指導するとき、最初はチューブ型のビレイデバイスを使用して基本動作を覚えてもらいますが、ある程度の段階でブレーキアシスト付きのデバイスも使うように促します。ブレーキアシストが付いていれば、万一、手元が狂ったときのバックアップになりますし、長時間のビレイやクイックドロー等の回収のとき、クライマー、ビレイヤーともに“ぎゅっ”とロープを固く握る動作が軽減されるため、楽です。
ブレーキアシスト付きデバイスは様々なモデルが発売され、それぞれに優れたポイントがあって迷うところですが、私が薦めているのはクライミングテクノロジー「クリップアップ プラス」です。ロックの解除を除けば、操作方法がチューブ型デバイスと同じため、ビギナーでも使い分けしやすいのが最大の利点だと思っています。デバイス特有の持ち方や繰り出し方を習得しなくてもよく、チューブ型とシチュエーションによって使い分けたときにも誤操作をする危険性が低いのではないでしょうか。
今回新しくリリースされたクリックアップ プラスを手にして、まず注目したのは対応するロープの太さです。既存のクリックアップが8.9~10.5㎜なのに対し、新しいモデルは8.5~11.0㎜となっています。シングルロープがどんどん細くなっている今、0.4㎜細いロープまで対応してくるのは予想していましたが、11.0㎜と太いロープにも対応としてきたのには意外でした。
そこで、10.5㎜の毛羽だって太くなったロープ(手元に11㎜ロープはなかったので)でビレイしてみました。さすがにロープの繰り出しがスムーズとは言えないので、太いロープでのビレイはトップロープのときのみと考えたほうがいいでしょう。ただし、ロックしたときの安心感はあり、ビギナーが初めてトップロープのビレイをするときなどに適しています。
リードのビレイ時、ロープが細くなればなるほど繰り出しやすくなるのは当然として、クライマーが落ちたときやテンションをかけたときに確実にロックし、しっかりロープを固定してくれるのは新モデルの「クリックアップ プラス」です。近年、シングルロープは細くなっているだけでなく、ドライ加工がされて表面がツルツルしたモデルを使うことが増えました。ロープは2~3年程度で買い替えることを前提にすれば、そろそろ細いロープに変えているクライマーは多いのではないでしょうか。
新しいクリックアップ プラスは細くてドライ加工されたロープと相性がいいように感じました。9㎜前半でもロックした後で、ジワジワ滑っていくようなことがありません。ビレイデバイスの使い勝手や安全性はロープとの相性でも決まりますから、これから、“いいロープ”を使ってクライミングしようという方には、このクリックアップ プラスがおすすめです。
さらに、クリックアップ プラスに追加された新機能は、「V-PROOF SYSTEM」。たぐり落ちや、ロープ繰り出し中の不意の落下にもブレーキアシストが作動します。ビレイ中に、末端側ロープが下に向かって引かれていない状態であっても、クライマーがフォールした時にV-PROOFのエッジ部とロープが接触することで摩擦が生じ、本体のロックシステムが作動するというものです。ロープがビレイ初心者の方の場合、やはり経験を積んでいる方と違い、初動がワンテンポ遅れやすく、このいわゆる”ふた(V-PROOFパーテーション)”が備わっていることが、大きな安心感を生む構造になっています。