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バテないための秘訣は?
猛暑に立ち向かう陽希流の水分補給方法を聞いてみた。
日本3百名山全山縦走にチャレンジ中の田中陽希をリアルルポ。

SOURCEワイドパック

写真・文:かねだこうじ(ハタケスタジオ)

本ページの内容は商品インプレッション記事のため、使用者個人の感想を含んでおります。

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    酷暑の藤原岳を登り終え、宿の前でインタビューの準備をする陽希

日本3百名山にチャレンジ中の田中陽希(以下、陽希)から、岐阜県に入ったと連絡があった。不意の転倒で右手甲を骨折してしまった陽希は、カヤックでの琵琶湖ショートカットを諦め、徒歩で伊吹山、藤原岳、御在所を踏破するルートに変更していた。
慣れないギブスは連日の猛暑で汗まみれになり、トレッキングポールも握れないため、心身ともに疲労はピークに達しているようだった。さらに、汗で濡れたギブスが毎晩の睡眠を妨げているようで、気を許して腕枕でもしようものなら、汗で醗酵したギブスの臭いで目が覚めてしまうらしい。しかしそんな陽希の都合なんてお構いなしに、巷では「観測史上最高記録」「危険な暑さ」という連日の報道が日を増すごとに過熱し、琵琶湖近辺の滋賀や岐阜では、40℃を超す記録的な数字を出していた。
私は彼のチャレンジをサポートするスタッフの一員として、時折こうして連絡を取り合いながら装備交換などを行っている。今回は滋賀県最高峰の伊吹山を下りたと連絡があり、標高の低い日本三百名山の藤原岳で会うことになった。標高は1140m。登山口からの標高差は約950mで、コースタイムは約4時間弱の登りだ。
早朝5時、徒歩移動の陽希とはしばしの別れを告げ、クルマでひと足先に藤原町山口の登山口へ向かった。この日も例にもれず猛暑日となり、7時前なのに気温はすでに30℃を超えていた。

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    早朝から気温はぐんぐん上昇し、すぐに全身汗まみれになる

標高200mに満たない登山口で、カメラと予備のレンズ、500mlのペットボトル水2本をバックパックに詰め、山頂で陽希を待ち構えるために登山道へ突入した。あまり知られていないが、藤原岳は伊吹山と同じく山全体が石灰質で、山頂付近では石灰露岩のカルスト地形が見られるらしい。確かに途中の登山道のあちらこちらでもそれらしき白い岩が露出していた。
それにしても暑い。登りだしてまだそれほど経っていないのに、汗が滝のように滴り落ちる。標高はまだ500mでルートの半分。持ってきたペットボトルの1本がすでに底を尽きそうだ。さらに、水を飲むためにいちいち立ち止まり、カメラを外して、バックパックを下ろす仕草もストレスでしかなく、出発前に陽希から言われた「登山道にはヒルがいますよ」という注意が、ゆっくり座って休むことを嫌がらせ、呼吸を乱しながら足を前進させていた。
そういえば陽希は、ハイドレーションを使っていた。あれがあればもっと楽に気持ち良く登れていただろうか……。陽希は水を入れたハイドレーションごと冷凍庫で凍らせていたようだったが、連日の猛暑を見据えての用意だったのかと思うと、残り1本の水がとても心細いものに感じた。

……藤原岳登山前日の宿にて。

―真っ黒になったね。出発してからどれくらい経ったかな?

陽希:お正月に屋久島から出発しましたので、もう7カ月半になります。2014年の日本百名山は約7カ月間で、2015年の日本2百名山も約7カ月半でゴールしていますので、今回の日本3百名山が想像以上に長く険しい旅になっていると実感しています。ただ、今まで駆け抜けてしまった山をしっかりと見つめなおしたいという想いで、コンディションの悪い日の登山を避けているということもありますが、踏破距離はすでに約5,000㎞に達していると思います。

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    洗濯して、電子機器を充電して、日記を書いて、明日の用意をする。宿に着いたら必ず行う日課だ

―連日猛暑が続いているけど、暑さへの対策などはあるの?

陽希:最近やっていることは、前日のうちにハイドレーションごと水を凍らせることです。今使っているのは「SOURCE(ソース)」の1.5L容量ですが、山によっては2L容量を使用して氷水を背負っています。

―ハイドレーションが破れることはないの?

陽希:他のメーカーはわかりませんが、「SOURCE」の丈夫さは実感できていますので安心して使っています。それに、パンパンに水を入れるわけではないので大丈夫です。しっかり凍っていれば、朝5時から歩き始めて山頂に到着するお昼くらいまで冷たい水が楽しめます。バックパックによってはハイドレーション専用ポケットが背中側にあったりしますが、背中の熱で水が温くなるので、僕は一番上に乗せる感じで収納しています。水の補給もしやすいですし、水の揺れも少ないので気になりません。

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    ハイドレーションパックのまま冷凍庫で凍らすのが陽希スタイル
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暑い夏を乗り切るための大切な日課。背中側ではなく最後に乗せるのがコツだそうだ

―水は毎日どれくらい持つようにしているの?

陽希:季節によって異なりますが、水が特に大切になる夏場は最低でも3Lは必ず持つようにしています。例えばコースタイムが6時間で水場がないルートでは、さらにペットボトルを追加して持ちます。一日で消費した水の量の最高記録は、8Lでした。夏は食料よりも水が大切です。

―水が足りなくなってしまった経験はある?

陽希:日本2百名山の旅の八海山ですね。今でも教訓にしている出来事として忘れられません。その時は「SOURCE」の2L容量を使用していました。スピードを上げての登山でしたので長時間コースでも何とかなるだろうと高を括っていたんです。それが実際には10時間を越える行動になり、途中の小屋で水の補給ができるチャンスもあったのですが、過信が悲劇を呼んでしまった結果になってしまいました。あの時は心身ともにカラカラになって本当に疲れ果てました。

―脱水症状になってしまったということ? どういう症状が身体にでる?

陽希:人によって違うとは思いますが、僕の場合はまず目が乾きます。まぶたが閉じにくくなるというか、まばたきがゆっくりになりました。次に唇がしびれ、それが次第に手足などの末端に広がります。ろれつも回らなくなりますね。何となくですが、内臓の壁が張り付く感じもあり、意識がもうろうとしだすんです。八海山ではそのすべてを経験しました。

―水場がない山ではどんな対策をしているの?

陽希:いろんな装備の中でもトップクラスで重いのが水です。余分な水は持ちたくないのですが、それでもやはり多めに持つようにしています。水を飲むことで落ち着きを取り戻すこともできますし、歩くペースに区切りもできるので、疲労も少なくなるような気がします。ただ、水を多めに持つとしても限界はあります。先日の大峰奥駈道では水場がほとんどなくて、水を飲むペースとコースタイム、水場までの距離をいつも考えなければなりませんでした。水がなくなることがリスクに直結することを経験しているので、水分不足になるのは怖いですね。

―いつもハイドレーションを利用しているけど、理由は?

陽希:ハイドレーションを使う理由は大きく2つあります。ひとつは、飲みたい時にすぐ飲めること。もうひとつは、両手がふさがっていても水が飲めることです。水が欲しいなと思っていても、バックパックを下ろすのが面倒でついつい水分補給を疎かにしてしまうことがよくあると思いますが、ハイドレーションの場合は歩きながらでも少量ずつ飲めるのでとても便利です。例えば、カヤックやバイクに乗っている時でも、ハイドレーションのチューブを一瞬で口に運べるメリットは大きいと思います。少量でも水が飲めれば心に余裕が生まれますからね。

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    こまめな水分補給が大切だという陽希。歩きながらでも片手ですぐに口に運べる便利さが魅力だという

―ハイドレーションとペットボトルの使い分けは?

陽希:ハイドレーションは行動中のこまめな水分補給に欠かせない存在です。一度にたくさんの水を飲むことはできませんが、少量ずつ好きな時に水分補給ができるのはハイドレーションだけが持つ魅力だと思います。ペットボトルは傾けた分だけドボドボと水が落ちてきますから、途中休憩や山頂で一度にたくさんの水を飲みたい時に便利ですね。

―汗は多くかく方?

陽希:バケツをかぶったように全身がびちゃびちゃになります。靴の中なんて毎日バスタブ状態です。全部汗なんです。途中で靴を脱いで靴下を絞ると、気持ちよく汗が絞れますよ。今までの登山で一番水を飲んだ時が8Lでしたが、それが全部汗で流れ出ていると思うと、水って本当に大切なんだと実感します。

―上手な水の摂取方法は?

陽希:こまめな水分補給が大切ですが、ミネラルも一緒に摂れると良いですね。僕は塩タブレットなどを持ち歩いています。水を飲みながら少しずつ塩分も摂取すると元気が出ます。

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    山頂でのひと休みにゆっくりハイドレーションを口に運ぶ。これからの下山に備えているのだろう

残り1本となった500mlのペットボトルを手に持ち、陽希との会話を思い出した。滴り落ちる汗を補うために相応の水が必要だったことを今更ながら痛感するが、時すでに遅い。ハイドレーションも持っていない私にできることは、今ある水をできるだけ節約することだった。
山頂までの残りの標高は300mほどだ。時間にして約2時間だろう。標高を上げるにつれて多少涼しくなり、時おり肌を撫でる冷たい風が救いだ。黙々と歩いているうちに雲の中に入っていた。静まり返る稜線に一匹の鹿が草を食んでいる。知名度の低いこの藤原岳が日本三百名山に選ばれている理由の景色が目の前に広がっていた。

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    樹林帯から抜け出し事を知らせる稜線の景色の中に一匹の鹿が食事をしていた
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    石灰露岩したカルスト地形が広がる特徴的な藤原岳の山頂付近の風景

霧の中に真っ白い岩がゴロゴロと転がっていた。まるで恐竜の化石がニョキニョキと土から湧き出てきているようだ。あいにくの曇り空で山頂付近は霧の中だったが、それがより一層の非日常的な空間を演出していた。この独特な風景から、日本3百名山に選ばれる理由がはっきりと伝わってくる。植物の緑と土の色、そして石灰露岩の白が複雑なコントラストを創り出している。山腹付近に露出した石灰岩は純度が高いようで、山頂付近の岩と比べて色が白く、やや青光りしているようにも見える。山全体が石灰岩で形成されているところに土が混じり、植物が場所を競って根を伸ばしているのだろう。
さらに標高を上げると、アルプスの森林限界のような風景が広がっていた。よく知るハイマツやシャクナゲが彩る雲上の世界ではなく、杉林からブナ林へと植生の変化を見せながら、やがてツツジ科の低木林と草花が広がる標高1,000mの多様性だ。そんな山頂付近の草原を歩けばのびのびと暮らすたくさんの野生鹿に出合い、足下に目を移せば艶やかな光沢を放つセンチコガネが小さな歩を進めていた。なんとも言えない贅沢な時間が流れていることに気づかせてくれる幸せな登山だ。

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    沢山の鹿が暮らすことができる豊かな森だ
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    標高1,140mの山頂が見える。まるでアルプスの森林限界を越えた風景だ
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    動植物の多さが森の豊かさを象徴している

避難小屋の藤原山荘から藤原岳の山頂までは約20分。ここで陽希を待つことにして休憩をしていると、濃霧に包まれていた山頂が姿を現し、青空まで見えだした。しばらく石灰露岩が創り出す異空間の景色に見惚れていると、颯爽と下る陽希の姿があった。
山頂までの登りを陽希は一度も止まることなく歩を進め、私がようやく追いついた頃にはすでにひと息ついてのんびりと景色を楽しんでいた。陽希は、登りも下りもハイドレーションでこまめに水を飲むことで自分のペースを保っているらしい。思い起こせばそのハイドレーションの水は、昨晩冷凍庫で凍らせていた冷たい水だ。広がる景色と適度にヒートした身体に、冷たい水はさぞ旨いことだろう。

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    山頂の景色を楽しむ陽希。58座目となる藤原岳に何を想ったのだろうか
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    「これ便利ですよ」と余裕の笑顔を見せてくれた陽希

下山後に陽希と再会
「SOURCE」のハイドレーションについてインタビューした

(インタビュー 動画:https://youtu.be/j8PfluhxcOQ)

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