細部にまでこだわった登山靴の芸術品
ザンバランといえば、「知る人ぞ知る」的登山靴ブランドだ。ちょっと山好きな人であればザンバランのことを知っているに違いない。
実のところいままでザンバランの靴は履いたことはなかったのだが、最近のカタログを見るとザンバランにも高所靴や冬場のガイド登山で使えそうな靴が増えているのに気づいた。その中で気になる靴があり、私の登山で使えるのかどうか試してみることにした。
軽量ながら、保温性とフィット感にすぐれる
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寒さの厳しい冬期の早池峰山でテスト。保温性、耐久性に問題はなかった。また、足首まわりの動きもよく、歩きやすさも確認 |
私が手にしたモデルは
エクスパート・プロGT。ザンバランのラインナップにあって、上級山岳向けのクラスにある。積雪期や、ヨーロッパ・アルプスでの氷河トレッキング、ミックスルート(岩と雪と氷がまじったルート)などで使うためのモデルだ。
この靴は軽量なのが特徴だが、私にとってそれは不安点であった。軽量化されているぶん、シビアな雪山や海外の高峰で使用できる保温性などの性能が損なわれてはいないのだろうか。
そこで、まずは自宅に近い岩手の山で何回かテストをしてみた。岩手の山は標高こそ低いが、低温と地吹雪は一級の雪山だ。結果、寒さに対して、まったく問題はなかった。寒くなく、足の蒸れ感も少ない。保温性の高いベルワンガー社のレザーと、ゴアテックスメンブレンと化繊の中綿が一体化したゴアテックスデュラサーム(ゴアテックス® Insulated Comfort Footwear)が足の快適環境を向上させているのだろう。
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足首まわりにはマイクロファイバーを採用。適度な柔軟性があり歩きやすい。また、クライミング時には足首の動きがよく使いやすい |
また、使いはじめから私の足にフィットしたのも好印象だ。特にカカト部分のホールド感がよい。クライミング時にもカカトが浮くことがないので、垂直な壁でも使いやすい。さらに、マイクロファイバーのおかげで、足首まわりの動きがよく、歩きやすさもある。
最近は、軽量ブーツとして合成繊維を主体にしたものが流行りだが、エクスパート・プロGTはレザー製だからこその耐久性がある。山岳ガイドという職業柄、常に登山用品に求めている頑丈さにも十分合格していた。
さらに、イタリアでつくられたザンバランの靴を実際に手にすると、その仕上がりのていねいさ、美しさにも気づく。登山靴の芸術である、といっても大げさではないだろう。
高所でも安心できる保温性と耐久力
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エクアドルアンデスでのガイド登山でも使用。軽量性と保温性が両立されていることにより、このクラスの山でも快適な足環境を保つ |
次に、エクアドルアンデスの5,000〜6,000メートル級の山々のガイディングで使ったが、とても使い心地がよかった。
このクラスの山だと、軽さのみ求めて日本の残雪期用の靴で登ろうとする人も多いのだが、それでは凍傷の危険が高すぎる。たしかに高所登山では1グラムでも装備を軽くして体力をセーブすることは大切な戦略だが、保温性を犠牲にすべきではない。この点、エクスパート・プロGTは軽さと、保温性・堅牢さとの妥協点が高い次元で成立している。もちろん夏のヨーロッパ・アルプスの登攀でも、十分対応できるはずだ。
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帰宅後、自宅でエクスパート・プロGTをメンテナンスする。こういったギアのメンテナンスも登山の楽しみのひとつ |
レザーブーツだから、山行後には手入れが必要だ。しかし、このメンテナンスも山の楽しみだ。自宅でこのエクスパート・プロGTをメンテナンスしているとき、いろいろな思い出がよみがえる。そんな温もりが感じられるのも、このレザーブーツ、エクスパート・プロGTが好きな理由の一つだ。

北村俊之
1962年東京生まれ。小学校より野外活動、登山に親しむ。早稲田大学入学後、学内クラブおよび社会人山岳会で本格的登山に取り組む。ブロードピーク三山無酸素アルパインスタイル縦走、チョー・オユー無酸素単独登頂など。8000m峰6座登頂、うち5座は無酸素登頂。現在は、毎年、世界の高峰をガイドしている。立山ガイド協会所属。国際山岳ガイド。日本山岳ガイド協会ガイド資格検定員担当。二児(娘)の父でもある。