スピード感のあるストーブである。

イータパワー・EFトレイル

文:蓑和田一洋

 奥多摩御岳渓谷へのハイキングでポトフを作ることにした。普通は時間のかかる料理だが野外料理ということで出発前に自宅で野菜を切り、ジャガイモやタマネギは下茹でをしておく。つけあわせはクスクス。クスクスとは簡単にいえば粒状パスタ。こちらはポトフとは違いお湯を注ぐだけでも作ることができる。米やパスタを作るよりもずっと簡単だ。
 渓谷沿いにあるハイキングコースを2時間ほど散策してから料理にかかる。ノンアルコールビールを飲んでから、イータを組み立てる。正しくはイータパワー・EFトレイルだが、ここでは通称・イータとさせてもらおう。

大きい風防と専用鍋にあるヒートエクスチェンジャーが、すぐれた燃焼効率を生み出す。

 イータはストーブと一体型になる風防をもち、ヒートエクスチェンジャーを装備した専用鍋を使う。この構造は、簡単にいえばストーブが生み出す熱のほとんどを鍋へ伝えるためのもの。普通のストーブだとその多くの熱は大気中に逃げてしまう。燃焼効率は約40%。つまり、炎が生み出す熱の4割しか鍋に伝わらない。残りの6割は大気中に放出される。それに対してイータの燃焼効率は約80%。つまり、ほとんどの熱が鍋に吸収されることになる。


わずか数分で鍋はグツグツになるほどパワフル。それでいて燃費もいいから、時間のかかる煮込み系の料理でも使いやすい。

 さて、クスクスを作るためのお湯を沸かしてみると、まさに瞬間湯沸機。2分もしないうちにお湯となる。つぎにポトフを作る。下準備をした野菜にソーセージ、そして水を専用鍋に入れる。ここから8分ほど煮込むのだが、燃焼効率が高いため普通のストーブより少ない燃料で煮込むことができる。ものすごい加速力があるのに燃費もよい夢のスポーツカーを手にしたときのような、使ってみるとそんな快感がある。

接地面の口径は150ミリ以上もある大口径。安定感にすぐれ、調理がラク。

 煮立ちすぎないよう火力を調整しながら鍋の中の具をひとまぜ。ストーブの重心が低いため安定感が高く、専用鍋が倒れないように神経を使わなくてもいい。鍋の安定感でいえば数あるストーブのなかでも、イータはナンバー1だろう。  専用鍋の口径も大きいから、調味料を入れるのもラク。野菜を炒めたりパスタを茹でたりするのも、普通の野外用鍋(クッカー)とかわらない。

渓谷ではボルダリングやカヌーを楽しむ人が多かった。

 スピードがあって燃費もいいイータを使っていると気分にも余裕ができる。そこで、妻がポトフを煮込んでいる間、周囲を散策した。渓谷ではカヌー、河原ではボルダリング、MTB、私たちのようにファミリーハイキングなどさまざまなアクティビティを楽しむ人がいる。

渓谷で見つけたクレソン。もともと生命力が強い植物で、大量に生えているのを見つけることができた。ほどよい辛みがソーセージと合って美味しい。 名付けて「渓谷風ポトフ」。クレソンを添えたことがポイント。自宅で下準備をしておくことで野外でも簡単に調理することができる。
 ふと渓谷に流れ込む小さな流れを見ると、そのなかにクレソン見つけた。それはポトフに渓谷の味をそえてくれることになった。

(取材日 2009年6月7日)
執筆・取材 蓑和田一洋(みのわだ・かずひろ) 
1969年生まれ。山岳ライター、編集者。登山専門誌『山と渓谷』、『ROCK&SNOW』などで活躍。東京在住。